40年のベテラン講師の今だから笑える「大失敗エピソード」4選

長年にわたり、子どもたちの可能性と笑顔が見たくて、続けてきた教室で「大失敗」といえる課題がありました。課題NG集として今だから笑える課題3選をお話しましょう。四苦八苦しながら完成まで辿り着いたプロセスは忘れられない記憶です。見本で作った作品も長年、保存していましたが流石にもう残っておらず画像をお見せできないのが残念です。

失敗は成功のもと!?

それは一体どんな課題でしょうか?結局は、失敗で終わらせずに作品として完成させることはできました。楽しみに通ってくる子どもたちの期待を裏切ることはできないと思ったからです。

しかし完成させるまでの道のりは、課題を準備した自分にしか分からない大変さや、筆舌に尽くし難いものがありました。これから教室を始めて見たいと思っている方には参考になり、またお子さんと一緒にお家アートを楽しみたいと思っている方にとっては、難易度が高くお家アートには不向きかもしれません。笑えるNG集として気軽にお楽しみいただければと思います。

大失敗と言えるものには大きく分けて2種類あリます。一つは準備する教材の内容、そしてもう一つは完成までのプロセスにあリました。

(1)風がこない扇風機

大失敗と言えば、まず最初に浮かぶのは、扇風機です。これは小学校高学年向けだったのか、1年生からの課題だったのか、はっきり覚えていませんが、仕組み的には難しくない上に、実際に活用できるという実際の生活に役立つ造形工作でした。

ベニヤ板の土台の上に電池ボックスをセット、柱を立ててモーターと羽根を取り付けます。羽根は薄いアルミ板にハサミで切り込みを入れてゆるく折り曲げると扇風機らしくなります。モーターと電池部分を幅広の輪ゴムで繋いで羽根をまわすのですが、まず最初に柱の高さに問題がありました。輪ゴムが強すぎてモーターが引っ張られてしまいました。柱の角材の高さを低く調節する必要が出てきたのです。この時は、まだマニュアルを必死で見ては、その通りにやるのが精一杯でした。この扇風機のマニュアルに問題があろうとは、まだ知るよしもなかったのです。

2週続きで仕上げるため、1週目は土台、柱、モーターの取り付けまで、でしたが2週目は柱の高さを変えるためモーターも再設置しなくてはなりませんでした。

さて、子どもたちに見せるため、事前に羽根を作ってモーターに取り付けると本物の扇風機のように回転して風が来ます。これは子どもたちが、どんなに喜ぶだろうかと見本を作りながらワクワクしていました。

一応、作り方のマニュアルがありますので、それを見ながら作りますが、そこには本物の扇風機のように羽根の周りをカラー針金で覆うやり方ともう一つ、空き箱を被せて羽根のところを窓のように開けるやり方が出ていました。針金で覆うのは大変だろうと思い、空き箱に窓を開けて設置する方法をやって見ました。電池ボックスも隠れるし、見た目もスッキリします。

さぁ!箱も設置して、いよいよスイッチオン!です。羽根がビューンと回転して良い感じです。ところが、風がこない!?え、どうして?すでに時間はどんどん過ぎて午前3時になっていました。試行錯誤の結果、分かったことは、箱で周りを覆うと風が来ないという簡単なことだったのです。箱を外せば涼しい風が来る、箱をつければ風がこない、マニュアルにあるので信用して熱心に作りましたが、扇風機の風の仕組みを考えたら、周囲を覆ってしまえば風が来るはずはなかったのです。

東京から受けたイラストの仕事も締切まであと少し、なのに夜中過ぎまで必死に費やした時間を考えると、本当にがっかりしました。この結果、2週目はカラー針金で羽根の周りを覆うように子どもたちには指導しました。羽根を取り付ける時、裏表を間違えて設置すると風は後ろへ吹いてしまいますから、また付け直し・・・子どもたちには多くの経験ができた課題でした。

苦心の末、見た目も本物みたいな涼しい風が来る扇風機の完成でした。もちろん、子どもたちは大喜びで大事に作品を持ち帰りました。その姿に苦労も報われるような気がしたものです。

(2)竹馬ならぬ角材で馬?
以前に関わっていた「こども美術学園」では、日本各地に附属教室や直営教室がありました。東京本部でマニュアルを作成し、課題も3ヶ月ごと決められたスケジュール通りに消化していきます。後半、私もこのマニュアル作成に携わることになりましたが、この時はまだマニュアル通りに課題を進めていくことで精一杯でした。
「竹馬作り」昔ながらの子どもの遊具です。実際に作ったもので遊べる楽しさや喜びを、子どもたちに感じてもらう点で、大変良い課題だと思いました。ところが私の教室は北海道です。竹といえば冬囲いのための細い竹しか手に入りません。
では、どうするのか。実際にこどもが乗って遊ぶものですから丈夫でなくてはなりません。私はホームセンターへ材料となるものを見に行きました。この課題には、丈夫さが必要なことから、材料は角材しか考えられませんでした。
足を乗せる部分、それらを接合する角材、同じ物がペアで必要です。角材をカットするのにノコギリも必要です。果たして子どもたちが、どこまでノコギリを使えるのかも、やって見なければ分からない事も多かったように思い出します。いくらなんでも、と思える部分は全員の分を自分でカットしました。汗だくになりました。そして釘打ちで角材を接合したらできあがりです。マニュアル通りに竹を使えば、足を乗せる高さ調節もできたのかもしれません。
この課題は、まず準備の大変さにありました。一人二人の材料ではありません。小学生1年生から6年生までが取り組む課題でした。まず角材を人数分、計算して購入した値段は、その当時の1ヶ月分の月謝に相当するほどでした。
やむをえず事情を説明して半分はそれぞれのお家で負担してもらいました。まだ車の免許すら持っていなかった私は、母に手伝ってもらいながらホームセンターからたくさんの角材を引きずって持ち帰りました。
もちろん、本部には竹が手に入らないことや、大変な材料費がかかったことなど知らせておいたことは言うまでもありません。
(3)コイルの大迷路?
絵画造形教室とは言え、こんなことまでするのか?と思った課題に電磁石がありました。私の記憶では中学1年生の理科でやったように思います。
2週連続で電磁石を作って針金ハンマーを作りベルを鳴らすというものでした。理数系が苦手な私には、内心うんざりする内容です。でも、できあがれば子どもたちの自信になり、喜ぶ笑顔が目に浮かびました。
その上、教室の備品として針金を接着するためのハンダごてにハンダまで用意しなければなりませんでした。
まず事前に自分でやって見なければ指導できません。ハンダゴテもハンダも初めてでした。ハンダゴテにハンダがくっ付いたら、落とすためのヤスリもありました。本部から取り寄せた教材にはベル、電磁石のコイル、ハンダゴテなども入っていたように記憶しています。
やってみて分かったことは、コイルが絡まりやすいことです。子ども達がやったら、あちこちで絡んで大変なことになるかもしれないと予測はできました。
しかし大勢の子どもたちのコイルを1つずつ別の物に巻き付けておく時間は取れませんでした。私の不安は的中し、あちこちでまるで迷路のように絡み合ったコイルが出現しました。解けても、また絡む・・・時間がいくらあっても足りません。1時間、2時間と終了時間が延長していきました。
子どもたちも実際にベルを鳴らすことを楽しみにしているので、誰一人帰ることを考える子どもはおりませんでした。
2週目は、半田付けです。そこまで到達した子どもから順番に半田付けをしていきました。とにかく、火傷をしないように、細心の注意を払って作っていきました。針金ハンマーの微調整でベルの鳴り方が違います。みんな時間を忘れて取り組んだ結果、お陰様で、子どもたちは怪我もなく、無事に作品を完成させることができました。
(4)本物のわらじ作り
日本古来の伝承文化の一つ、わらじを子どもたちと作ることになりました。本物のわらじです。と言うことは、稲藁が必要になります。本部からは教材パックとして農家のそばにある教室から、稲藁を送ってもらうよう注文書が来ました。
個別に送付は大変なので地域にある他の教室の分もまとめて発注するようにとのことでした。さて、届いた稲藁は軽くてもバサバサと藁が落ちたりして扱いが大変でした。それでも昔、農家でやっていたようにみんなで作り始めました。
子どもたちにそれぞれ稲藁の束を渡し、霧吹きで水分を与えてから空瓶などで藁をドンドンと叩いて柔らかくしていきます。私にとっても初めてのことで、どれくらい叩けば稲藁が柔らかくなるのかも良く分かりませんでした。この段階で家の中は藁だらけになってしまいました。空瓶で稲藁を叩くたびに藁が飛び散ったりします。藁は子どもたちのソックスや衣類にもくっ付きますから、それでトイレにも手を洗いにも行くわけで、どんどん藁が家中に広がってしまいました。
作り始めは、わらじの骨組みとして太めの縄で足の大きさを作ります。裸足で足の親指に縄をかけて外側の形を作りました。そこに稲藁を編んでいくのです。ここでも、また細かい稲藁が散らかりました。それからわらじの鼻緒作りです。いらない布を細く切ったものなども藁と一緒に両手ではさみ込み、手のひらを滑らせるようにして編んでいきます。
できたら、わらじに取り付けて、最後は縄を引き締めてわらじの形を綺麗にしたら完成です。片方のわらじを作るだけでも大変でした。
私は常々、子どもには本物を見せることが必要だし、大切なことだと、機会あるごとに保護者の方々にお話してきました。この昔ながらのわらじ作りを体験できた子どもたちは素晴らしい経験になったことと思っています。ただし家中が藁だらけになってしまうことを除いて、です。私の後片付けがどれほど大変だったことか、思い返しても気が遠くなるように感じます。
この後、わらじ作りは何度かカリキュラムに出てきましたが、使用する材料は手芸店で売っているようなカラフルな太めの紐になりました。やはりどの教室も稲藁が散らかったことで大変だったのかと思いました。
今も思い返せば、当時の苦労が蘇ります。大変なこともたくさんありました。ただ一つ言えることは、子どもたちに有意義な時間を与えられたと言う達成感です。苦労しながらもやり遂げた自分も褒めたいと思いました。

参考ブログ・・・

(素材別に楽しむアイデア)https://bluecaros.com/300.html

(四季折々を楽しむ季節のアート遊び)https://bluecaros.com/552.html

(年齢別の発育とアートの関係)https://bluecaros.com/129.html

問い合わせ先:artlife1021@gmail.com  五十嵐までお気軽にどうぞ
・画像について:すべて執筆者撮影(教室風景、マニュアル記事より)執筆者:五十嵐 裕子
専門分野:児童造形指導40年/元「こども美術学園」講師、研修委員(新課題マニュアル作成、後進の指導)
・活動内容:親子造形ワークショップ主宰。木工・紙工作・紐素材など五感を育む絵画・造形が専門。イラストレーターとして受賞歴多数
・実績:研修委員として新課題マニュアル作成や後進の指導に携わるなど、子どもの発達段階に合わせた指導経験が豊富です。絵画、イラスト作品では蒼依 佑樺(あおい ゆうか)名を使用。アートコンテスト、その他で受賞歴 多数。
菩提樹やハスのの葉に着彩、構成したボタニーパインティング

ハスや菩提樹の葉に着彩、構成した作品

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