こども美術教室の作り方:必要な備品、準備など実践編

技術よりも大切なこと。40年間、心がけた「講師の心得」

「先生」として最初の一歩を踏み出すとき、誰も不安になります。

でも、安心してください。 40年前、私も手探りで始めました。 今日は、当時の私が研修で学んだ「講師としてのマインドセットと、これだけは揃えておきたい「教室の必需品」についてお話します。

講師としての心がけで今もはっきりと記憶に残っているのは、子どもと同じ目線で話し合うことでした。身長の低い子どもと会話する時、腰を屈めるのではなく、膝をついて目線を合わせることです。心情的には友達感覚で、と言われ、いつも心して対応していましたが、やはりどこかで線引きが必要だと実感したこともありました。そうでなければ、私が子どもに伝えたい大切なことが、きちんと子どもの心に落とし込めないのでは?と思うことがあったからです。

講師のマインドセット:あなたは「伴走者」である

講師として最も大切なのは、素晴らしい絵の描き方を教えることではありません。 それは、**「子どもの中の『やりたい!』気持ちや興味を引き出すことです。そして子どもの成長を見守る「忍耐強さ」を持つことは、「待つこと」に繋がります。

子どもを信じて待つことの大切さ

講師になって、自分の子ども時代を思い返し、気づいた事がありました。私が小学校3年生の時の私的なエピソードです。

担任の先生が、毎回、休み時間に体育館の白い輪を土俵がわりにして、お相撲をとってくれました。みんな、輪の周りに1列に並んで、土俵の仲間を応援します。しかし、私は先生が大好きだったのに、土俵に出られませんでした。先生とは自分よりずっと上の存在、その先生と同じ土俵で相撲を取るなんて・・・

段々と自分の番が近づくと、後ろの仲間に先を譲り、自分は後ろへ下がる、そんなことを、ずっと繰り返しました。

講師の立場で考えれば、それに気づかないはずはありません。どうして出て来ないのか?私だったら、声をかけたかも知れません。しかし、先生は何も気づかない様子でみんなと相撲をとり続けていました。それに安心した私は、何度も後ろへ回ったのです。しかし、私だって出てみたいという気持ちはありました。次こそは!そう何度も思って、とうとう学期末に土俵に出たのです。

「おお、来たな!」そう言って先生は私と相撲を取ってくださいました。その時の先生の真っ白なワイシャツの眩しさ、お洗濯の匂いは忘れられません。

その後、懇談会に出席した母が帰宅して「ずっと先生とお相撲とらなかったでしょう?先生が、やっと来てくれた!ってすごく喜んでいたわよ」と私に知らせてくれました。先生は私が出ていかないこと、分かっていたんだ、そう思いました。

講師の立場で子どもたちを見る時、子どもの中の成長の芽を信じて待つことの大切さを、当時の担任から教えられたと感謝と共に胸が熱くなります。

つい、大人は先回って「こうすれば綺麗に描けるよ」「簡単にできるよ」と手を出してしまいがちです。

  • 「待つ」勇気を持つ:子どもが黙って考えている時間は、脳がフル回転している時間です。
  • 「正解」を教えない:「空は何色?」と聞かれたら、「何色に見えるかな?」と問いかけ、その子の個性を引き出す。
  • 「寄り添う」姿勢:先生は教壇に立つ人ではなく、同じ目線で驚き、楽しむパートナーでありたいものです。
  • 主役は子ども:子どもから質問された時は、まずこの子はどうしたいと思っているのか?を考えてから答えます。
  • 子どもの作品を自分の好きな芸術にしない:自分の好きなようにアドバイスするのは簡単です。しかし、それは先生の作品になってしまいます。
  • 講師は子どもの相談役:教えるのではなく子どもの良さを引き出すための相談役になること
教室を始めるために最低限必要な「7つの備品」

高価な画材を最初から揃える必要はありません。自宅の一部を教室にする場合、まず優先すべきは**「子どもが安心して汚せる環境作り」**です。

  1. ビニールクロス(または厚手ブルーシート): 床テーブルやテーブルを保護します。これが一枚あるだけで、「汚しちゃダメ!」という先生のストレスが激減します。

  2. 古新聞: いくらあっても構いません。雑巾代わりに、筆を拭いても、万能です。また画板に敷いておくと絵の具がはみ出しても大丈夫なので、安心して絵の具が塗れます。

  3. 現状の筆洗いバケツ: 倒れにくく、安定感のあるものを選んでください。筆洗い用のバケツで2つに重ねて収納できるものがあります。

  4. 仕切りのある収納スペース: 「自分の使える道具はここ」という定位置を作ることで、子どもの自立の心と片付けの習慣を育てます。忘れ物をした場合に使える筆、筆洗い、接着剤や雑巾、画材などや画板を収納しておきましょう。

  5. 掲示用コルクボードやワイヤー: 描いたばかりの作品を飾る場所。自分の絵が飾られる喜びは、何よりのモチベーションになります。自宅の場合は、展示スペースを確保しやすいです。狭ければ、毎回、1作品ずつ展示する方法もあります。

  6. 画板:一人1枚。課題内容によって配置を変えたり臨機応変にセットできます。机だと座高によって見えづらくなる場合があり、工夫が必要です。

  7. 「先生専用」の良い道具: 子ども用はリーズナブルでも良いですが、先生が使う筆や絵の道具だけは、良い「本物」をご用意してください。「本物の色」を目の前で見せることは、最高の教育になります。

  8. スモック・エプロン: 「汚れるから思い切り描けない」という不安を親子から取り考えてみましょう。気なくなった古い大人用の半袖Tシャツをスモック代わりにするのもオススメです。ビニールシートに座った場合、膝下が一番、汚れやすいです。

「小さなトラブル」は成長の種

最初は、絵の道具をこぼしたり、友達と道具の貸し借りで揉めたりすることもあるでしょう。でも、それこそが教室という「小さな社会」で学ぶ大切な経験です。

講師がピリピリしていると、子どもたちの表現は縮こまってます。

私は常に教室は何でも話せる、安心できる場所になるよう心がけていました。こんなことを言ったら叱られるのでは?と子どもに思わせてしまえば、自由な発想やアイデアを発言足にくくなると思ったからです。

子どもは何でも私に話してくれます。その日、学校であったこたや、担任の先生のことなど、本当に賑やかな教室でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました